葬祭事業者の事業再構築(2)
目次
関連新分野への参入 ― 終身サポート事業という選択
葬儀業界は今、価格競争と単価下落という構造的な課題に直面しています。
この状況を打開し、安定的な経営基盤を築くためには、従来の「葬儀施行」という“点”のサービスだけでなく、「生前(終活)の売上」を事業の公式に組み込むことが不可欠です。
2025年、団塊の世代がすべて75歳以上となり、本格的な「リアルな終活」時代が到来しました。
地域密着型の葬儀社にとって今は、自社の強みを活かし「終身サポート事業」という関連新分野へ参入する絶好の機会です。
本記事では、その戦略的意義と具体的な推進方法を解説します。
目次
- 生前売上確保が価格競争回避の鍵
- 「リアルな終活」が本格化する三つの背景
- 終身サポート事業の全体像と葬儀社の優位性
- 参入の足がかり:「死後事務サービス」の確立
- 行政連携と一般社団法人設立戦略
1. 生前売上確保が価格競争回避の鍵
葬儀社の収益構造は一般的に、
施行件数 × 単価 + アフター + 葬家外売上
で構成されています。
ここに
「+α 生前売上」
を組み込むことが、これからの経営安定の鍵になります。
生前から相談・サポートを行うことで、
- 顧客との長期的な信頼関係構築
- 将来施行の自然な確保
- 価格競争に巻き込まれない体制づくり
が可能になります。
終活分野は、きめ細やかな対応が求められる領域です。
広域展開の大手チェーンよりも、地域密着型企業の方が圧倒的に強みを発揮できる市場といえます。
2. 「リアルな終活」が本格化する三つの背景
終活は一過性のブームではなく、確実に“ビジネス化”しています。その背景には社会構造の変化があります。
① 団塊世代の後期高齢化
2025年に団塊の世代がすべて75歳以上となります。
15年前のエンディングノートブームと異なり、今回は**実際に費用が動く「リアルな需要」**です。
② 単身高齢者の急増
2050年には5世帯に1世帯が高齢者単身世帯になると予測されています。
「家族がいない」「頼れない」という現実が、終活需要を押し上げています。
③ 「迷惑をかけたくない」という心理
高齢者の多くが、
「家族に負担をかけたくない」
という思いを強く持っています。
その結果、生前に準備を完了させたいというニーズが急速に高まっています。
3. 終身サポート事業の全体像と葬儀社の優位性
終身サポート事業は、
「健康に生活している状態」から「死亡後」までを支える包括的支援です。
主なサービスは以下の3つです。
① 身元保証サービス
- 入院・入所時の債務保証
- 各種手続き代理
② 日常生活支援サービス
- 買い物支援
- 通院付添い
- 財産管理
③ 死後事務サービス
- 遺体確認
- 死亡届代行
- 火葬手配
- 葬儀施行
- 納骨・永代供養
- 遺品整理
この市場には司法書士・不動産会社・介護関連事業者などが参入しています。
しかし、圧倒的な強みを持つのは葬儀社です。
なぜなら、お客様の最大の不安は、
「ちゃんと葬式をやってくれるのか」
「納骨まで責任を持ってくれるのか」
という“死後”への不安だからです。
宗教的知識と実務ノウハウを兼ね備えた葬儀社こそ、このコアな不安に応えられる存在です。
4. 参入の足がかり:「死後事務サービス」の確立
終身サポートは広範な事業です。
最初からすべてを網羅する必要はありません。
まずは葬儀社の強みである
「死後事務サービス」
から始めるべきです。
■ 連携先の確保
最優先は集客ではなく、協力体制の構築です。
- 介護施設
- 病院
- 高齢者住宅
これらの施設は、身寄りのない高齢者から終活相談を受けていますが、答えられる窓口が不足しています。
葬儀社が受け皿となることで、
月1件、2ヶ月に1件でも着実に実績が積み上がります。
この“小さな実績の積み重ね”が、後の大きな展開につながります。
5. 行政連携と一般社団法人設立戦略
現在、終身サポート事業は監督官庁が明確でなく、トラブルも増加しています。
厚生労働省は
「身寄りのない高齢者等への対応」として
第二種社会福祉事業の新設方針を示しています。
つまり、
行政と信頼できる地域事業者が連携する時代が始まる
ということです。
有効な戦略
① 早期参入と実績づくり
今から始めておくことで、将来行政と連携しやすくなります。
後発では参入障壁が高くなります。
② 非営利型一般社団法人の設立
自社とは別に一般社団法人を設立することで、
- 信頼性の向上
- 行政連携の円滑化
- 遺贈の受け入れが可能
となります。
受け入れた財産をサービス拡充や人材採用へ再投資できる点も大きなメリットです。
まとめ ― 「点」から「線」へ、そして「面」へ
これからの葬祭業は、
- 葬儀という「点」の事業
- アフターという「線」の事業
- 終身サポートという「面」の事業
へと進化していきます。
価格競争から脱却する鍵は、
生前から選ばれる存在になることです。
地域密着型葬儀社こそ、
終身サポートの中心を担う資格があります。
今動くか、後から参入するか。
その差は、数年後の経営基盤に大きく影響します。
終活市場は、単なる新規事業ではありません。
それは、葬祭業の未来そのものなのです。

