葬儀社経営コラム

葬儀社経営コラム第112号

個人事業主の葬儀に関する確定申告のポイント

個人事業主として葬儀業を営んでいる場合、確定申告は避けて通れない重要な業務の一つです。適切な税務処理を行うことで、節税対策をしながら事業の健全な運営につなげることができます。本コラムでは、葬儀業を営む個人事業主が確定申告を行う際のポイントについて解説します。

 

1. 確定申告が必要な理由
個人事業主として葬儀業を営んでいる場合、1年間の事業所得(売上から経費を引いた利益)がある場合は確定申告が必要になります。特に以下の条件に該当する方は確定申告を忘れないようにしましょう。

事業所得が年間48万円を超える場合(基礎控除の範囲を超える)
青色申告や白色申告をしている場合
開業届を提出している場合
源泉徴収されていない報酬がある場合

 

2. 青色申告と白色申告の違い
確定申告には青色申告と白色申告の2種類があります。
特に青色申告は節税効果が高いため、事業として本格的に葬儀業を続けるなら青色申告の活用をおすすめします。

項目 青色申告 白色申告
記帳義務 複式簿記(簡易簿記可) 単式簿記
控除額 最大65万円(電子申告) なし
赤字の繰越 3年間繰越可能 なし
家族への給与 専従者給与として経費計上可 必要経費としての計上不可

特に、青色申告の65万円控除は大きな節税効果があるため、複式簿記に慣れるか、会計ソフトを活用して対応するのが望ましいです。

 

3. 経費として計上できるもの
葬儀業を営むうえで発生する経費を正しく計上することで、**課税所得を減らし、税負担を軽減**できます。以下のような費用は経費として認められる可能性が高いです。

(1) 事業運営費
火葬場や会館の使用料
祭壇や装飾品の購入費
返礼品や供物の仕入れ費
供花やお布施の手配費用

(2) 広告・集客費
ホームページの制作・管理費
SEO対策やMEO対策のコンサル費
チラシやパンフレットの印刷・配布費
SNS広告費

(3) 車両・移動費
寝台車や霊柩車の維持費
ガソリン代や駐車場代
業務で使用するタクシー代

(4) 事務関連費
事務所の家賃(自宅兼用の場合は按分)
電話代やインターネット通信費
会計ソフトやクラウドサービス利用料
税理士への顧問料

経費として認められるためには、事業との関連性を証明できる領収書・請求書を保管することが重要です。

 

4. 確定申告の流れ
確定申告の手続きは以下の流れで行います。

(1) 収入と経費の整理
1年間の売上と経費を整理し、帳簿を作成する。
会計ソフトを活用すると簡単に管理できる。

(2) 必要書類の準備
確定申告書B(所得税申告用)
青色申告決算書(青色申告の場合)
収支内訳書(白色申告の場合)
経費の領収書・請求書
マイナンバーカード(電子申告の場合)

(3) 確定申告の提出
電子申告(e-Tax):自宅で簡単に申告でき、青色申告の控除額が65万円になる。
税務署への持参・郵送:期限内に最寄りの税務署へ提出。

申告期限:翌年の3月15日まで(青色申告特別控除の65万円を適用する場合、e-Taxでの申告が必須)

 

5. 節税対策のポイント
個人事業主の葬儀業で節税するためのポイントを押さえておきましょう。

✅ 青色申告を活用する
→ 最大65万円の控除が受けられるため、節税効果が高い。

✅ 経費を適切に計上する
→ 事業に関連する費用は漏れなく経費として申請する。

✅ 小規模企業共済・iDeCoを活用する
→ 将来の備えとして、掛金を経費扱いできる節税メリットがある。

✅ 消費税の免税事業者なら適用期限を確認
→ 売上1,000万円を超えると消費税の課税事業者になるため、適用期間をチェック。

✅ 専門家(税理士)に相談する
→ 事業が軌道に乗ったら、税理士に依頼することで節税の幅が広がる。

 

まとめ
個人事業主として葬儀業を営む場合、確定申告を適切に行うことで、税務リスクを回避しながら節税対策を進めることが可能です。特に青色申告の活用、経費の適正な計上、電子申告の活用がポイントとなります。

確定申告は毎年の業務ですが、しっかりと準備することで、不要な税負担を軽減し、事業の安定運営につなげることができます。初めての方は、会計ソフトの活用や税理士への相談も検討しながら、スムーズな申告を目指しましょう。