遺影は“選ぶ”から“撮る”時代へ

葬儀社が今こそ「生前遺影サービス」に取り組むべき理由
「自分の最期は、自分らしく迎えたい」――そんな想いから、近年、生前に遺影を撮影する方が増えています。
家族がスマホやアルバムをかき集めて、慌ただしく写真を探すのではなく、生きているうちに「自分らしい一枚」を残す。そんな価値観が少しずつ、でも確実に広がり始めています。
今回は、生前遺影のニーズが高まる背景と、葬儀社が今このサービスに取り組むべき理由についてご紹介します。
目次
なぜ今、「生前遺影」が求められているのか?
団塊の世代が後期高齢期を迎え、「人生の終わりを自分で準備する」終活が当たり前になりつつあります。
その中で注目されているのが、「遺影を生前に撮っておく」という選択肢です。
背景には、以下のような想いがあります。
- 家族に遺影選びの負担をかけたくない
- 外見が大きく変わる前に、自分らしい姿を残したい
- 人生の節目を記録し、前向きに“死”と向き合いたい
とくに女性や一人暮らしの高齢者に人気で、還暦・喜寿などの記念写真としても浸透しつつあります。
家族の負担を減らし、本人の満足度を高める
「写真が見つからない」「画質が悪くて使えない」「本人が嫌いだった写真しかない」―葬儀での“遺影探し”は、遺族にとって意外なほど大きなストレスになります。
その点、生前に撮影した遺影には次のようなメリットがあります。
- 故人が納得のいく表情や服装で見送られる
- 家族は写真選びから解放され、心に余裕が持てる
- 生き生きとした表情が、参列者の心にも残る
まさに「本人にとっても、家族にとっても」納得感のある終活のかたちと言えるでしょう。
葬儀社が提供できる「生前遺影サービス」3つの形
葬儀社が生前遺影サービスを始める方法として、次のようなモデルがあります。
① 地元カメラマンとの連携
地域の写真館やフォトグラファーと提携し、撮影を紹介。
スタジオや自宅訪問による撮影で、葬儀社は仲介料や撮影パッケージ販売によって収益化できます。
② 撮影イベントやセミナーの開催
ホールや公民館で「遺影撮影会」や「終活セミナー」を開催。
事前相談との連携もでき、地域住民との関係構築に役立ちます。
③ 自社スタッフによる簡易撮影
背景布や簡易照明を用意し、自社施設での“プチ撮影サービス”を提供。
高画質ではなくても、「とりあえず1枚欲しい」というニーズに応えられます。
ITを活用して「思い出」に変える
最近では、IT技術を活用することでサービスの付加価値も高まっています。
- 撮影データをクラウド保存して家族と共有
- 遺影に合わせた「メッセージ動画」作成サービス
- 顔写真からAIが描くイラスト風ポートレートの制作
これらにより、遺影は「死のための写真」ではなく、「今を生きた証」として再定義されているのです。
生前遺影から広がる信頼とご縁
生前遺影の撮影は、葬儀に関する事前相談の入口として非常に有効です。
写真撮影という非日常の体験を通じて、利用者との距離が自然と縮まり、エンディングノートや家族信託といった他の終活サービスにもつなげやすくなります。
さらに、実際にご本人と接しておくことで、葬儀スタッフの中にも「この方の最後を私たちが見届けるんだ」という想いが芽生え、より丁寧な対応へとつながるのです。
まとめ:小さなサービスが、大きな信頼に
生前遺影サービスは、設備投資も少なく、小さな葬儀社でも無理なくスタートできる取り組みです。
地元のカメラマンと手を組む、地域イベントを開く、自社ホールでの撮影会を始める――その一歩が、地域に選ばれる葬儀社づくりにつながります。
「遺影を選ぶ」から「自ら撮る」時代へ。
この変化にいち早く対応することが、これからの信頼獲得へのカギとなるでしょう。