「葬儀社様向け補助金情報」【中小企業診断士が解説】葬儀社が補助金の「資金繰り」で失敗しないための 3つの準備|後払い方式への対応法
「補助金が800万円もらえるなら、自己資金は400万円あれば大丈夫だろう」
「採択されたのだから、設備代の支払いには補助金を充てればいい」
もし、このように考えているとしたら注意が必要です。補助金には、申請時には意外と意識されにくい大きな特徴があります。
それは、多くの補助金が「後払い(精算払い)」だということです。
原則として、
採択 → 交付決定 → 設備等の発注・導入 → 代金の支払い → 実績報告 → 補助金額の確定 → 補助金入金
という順番になります。
つまり、補助金が振り込まれる前に、設備会社やシステム会社などへの支払いを自社で済ませなければならないのです。
葬儀社の場合、ホールの改装、省力化設備、安置関連設備、顧客管理システムなど、投資額が数百万円から数千万円になること
も珍しくありません。
「採択されたのに、支払うお金がない」
そんな事態にならないために、今回は補助金申請を考えている葬儀社が事前にやっておくべき3つの資金繰り対策を、中小企業
診断士の視点から解説します。
目次
まず知っておきたい「補助金800万円=800万円用意しなくてよい」ではない
最も多い勘違いがこれです。
例えば、ある補助金を利用して、補助対象経費1,200万円、補助率2/3で800万円の補助金を受けられるとします。
このとき、「400万円だけ準備しておけばよい」
と考えたくなります。
しかし実際には、通常、設備会社等に対していったん1,200万円を自社で支払う必要があります。
その後、実績報告を行う⇒補助金事務局の確認を受ける(場合によっては書類の差し替え等実績報告の修正を求められることもあ
る)⇒補助金額が確定する⇒精算払いを請求する
という手順を経て、補助金が入金されます。この間、数か月以上の時間を要することもあります。
しかも、実際には補助対象経費以上の支払いが発生します。
まず、補助対象経費となるのは消費税抜きの金額です。消費税は全額自負担です。補助対象経費が1,200万円の時には120万円の消費税を自己資金で賄う必要があります。
さらに、設備投資額が全額補助金対象経費として認められるとは限りません。
いったん補助 対象経費を1,200万円として申請して採択されたとしても、その後の審査の過程で一部の経費が対象外と認定されることも珍しくあ りません。
特に、パソコンやプリンタ等補助事業以外でも使用できる汎用品や一般的な車両等は対象外としている補助金が多いので 注意が必要です。
また、購入や資金調達に伴って発生する振込手数料、保険料や金利等の費用も補助金の対象外です。
「最終的な自己負担額はいくらか」
だけではなく、
「補助金が入るまで、最大でいくら立て替えなければならないか」
を見る必要があります。
ここを間違えると、補助金に採択されたことが、逆に資金繰り悪化の原因になってしまいます。
準備①「補助金専用の資金繰り表」を作る
最初にやっていただきたいのが、補助事業だけを切り出した資金繰り表の作成です。
難しい表を作る必要はありません。
設備投資額(税込)1,320万円、うち、着手金220万円、補助対象経費(税抜)1,200万円、補助金800万円の場合を例にして作成し てみます。
最低限、次の5項目を時系列で並べます。
| 時期 | 内容 | 支出 | 入金 | 資金残高への影響 |
| 10月 | 設備発注・着手金 | 220万円 | ▲220万円 | |
| 12月 | 設備納品・残金支払 | 1,100万円 | ▲1,320万円 | |
| 1月 | 実績報告 | ▲1,320万円 | ||
| 3月 | 補助金入金 | 800万円 | ▲520万円 |
ここで重要なのは、最終的な▲520万円ではありません。
見るべきなのは、
一時的に▲1,320万円になる時期がある
ということです。
この▲1,320万円が「最大立替額」です。
なお、この例では、補助対象外経費が無いと想定していますが、もし補助対象外経費があれば、最終的に必要な自己資金は520万円
より大きくなるので、その点も注意するヒル等があります。
さらに注意したいのが、設備投資だけを見てはいけないという点です。
葬儀社は毎月、
– 人件費
– 生花・棺・返礼品等の仕入代金
– 外注費
– 車両関連費
など、日常業務を回すための資金が必要です。
預金が2,000万円あるからといって、1,320万円をすべて設備投資に使えるわけではありません。
例えば、
現預金2,000万円-設備支払い1,320万円=残り680万円
となった結果、翌月の給与や仕入代金の支払いが苦しくなってしまっては本末転倒です。
したがって、
「設備投資に必要なお金」と「通常の葬儀事業を回すためのお金」を分けて考える
ことが非常に重要です。
準備② 採択されてからではなく「申請前」に金融機関へ相談する
補助金の資金繰りで最も有効なのが、金融機関からの融資を活用する方法です。
いわゆる「つなぎ資金」です。
例えば、
– 設備代 1,320万円(税込)
– 自己資金 520万円
– 金融機関からの借入 800万円
– 後日受領する補助金 800万円
という資金計画を組み、補助金入金までの資金不足を融資で補います。
ここでポイントになるのが、
「採択されてから銀行へ行けばいい」と考えないことです。
融資には当然、金融機関による審査があります。
採択通知を持って金融機関へ行けば、自動的に800万円貸してもらえるわけではありません。
日本政策金融公庫でも、融資審査にあたって決算書、最近の試算表、事業計画書、設備投資の場合には見積書等を提出し、事業内容
や計画を確認する流れとなっています。
そのため、理想的なのは補助金申請の段階から取引金融機関に、
「今回、〇〇補助金を活用して1,320万円の設備投資を予定しています」
「採択された場合、800万円程度のつなぎ資金が必要になる可能性があります」
と相談しておくことです。
金融機関に見せる資料は、補助金申請書とほぼ同じ
金融機関から見れば重要なのは、
「この投資をした結果、会社がどう良くなり、借りたお金を返済できるのか」
という点です。
そのため、
– 投資の目的
– 設備等の見積書
– 現在の経営課題
– 投資後の売上見込み
– コスト削減効果
– 今後の利益計画
– 補助金申請額
– 補助金入金までの資金繰り
をまとめておくと、金融機関への説明もしやすくなります。
つまり、優れた補助金事業計画書は、単なる「補助金をもらうための書類」ではなく、金融機関への融資説明資料にもなるのです。
準備③「支払日」から逆算して補助事業のスケジュールを組む
3つ目は、設備の導入日ではなく、支払日を基準にスケジュールを考えることです。
補助金では通常、
「いつ発注したか」
「いつ納品されたか」
「いつ支払ったか」
「どのような証拠書類が残っているか」
が非常に重要になります。
例えば、
「設備は3月25日に納品された。しかし、資金が足りなかったので支払いを4月末まで待ってもらった」
という対応が、補助事業の実施期限との関係で問題になる可能性があります。
また、
「資金がないから、とりあえず分割払いに変更しよう」
「支払方法をリースに変えよう」
と自己判断するのも危険です。
補助金ごとに、対象となる支払方法や対象期間、必要となる証拠書類は異なります。
契約条件や支払条件を変更するときには、必ず公募要領・補助事業の手引きを確認し、必要であれば事務局に事前確認することが重要です。
実績報告の書類不備も「入金の遅れ」につながる
もう一つ見落としやすいのが実績報告です。
設備代を無事に支払っても、見積書、発注書・契約書、納品書、請求書、振込記録、 設備等の写真など、必要な証拠書類が揃っていな
ければ、すぐに補助金額が確定するとは限りません。
つまり資金繰り上は、
「設備を買った日」ではなく、「実績報告を問題なく終え、補助金を受け取るまで」
を一つのプロジェクトとして管理する必要があるのです。
特に注意!葬儀社は「投資と繁忙期」が重ならないようにする
葬儀社ならではの注意点があります。
それは、設備投資による多額の支払いと、葬儀施行に伴う運転資金需要が同時に発生する可能性があることです。
一般的な小売業などと違い、葬儀は受注時期を会社側で自由に調整できません。
繁忙期に、
「補助事業の支払いで預金残高が大きく減っている」
「通常業務の仕入れや外注費も増えている」
「さらに賞与や税金の支払い時期まで重なった」
という状況になると、帳簿上は黒字でも資金繰りが急激に厳しくなることがあります。
したがって補助事業を計画するときには、設備投資だけを見るのではなく、
通常事業+補助事業+借入返済+税金・賞与
まで含めた年間資金繰り表を作ることをおすすめします。
まとめ:「採択される計画」と「最後まで実行できる計画」は違う
補助金申請では、どうしても
「採択されるかどうか」
に意識が集中します。
しかし経営者にとって本当に重要なのは、採択通知を受け取ることではありません。
補助事業を無理なく実行し、補助金を受け取り、その投資によって会社の収益力を高めること
です。
そのためには、
① 最大立替額を資金繰り表で把握する
② 申請段階から金融機関に相談しておく
③ 支払日・実績報告・補助金入金まで逆算してスケジュールを作る
という3つの準備が重要です。
補助金は、上手に活用すれば設備投資やDX、省力化、新サービス開発などを大きく後押ししてくれる制度です。
一方で、
「800万円補助されるから800万円分のお金は不要」
という感覚で進めると、一時的に多額の資金が会社から出ていき、通常の葬儀業務にまで影響しかねません。
補助金申請と資金繰り計画は、必ずセットで考える
これが、補助金を経営に生かすための重要なポイントです。
「自社の場合、いくら現金を準備しておけばいいかわからない」
「補助金と銀行融資をどう組み合わせればいいかわからない」
「設備投資をしたいが、通常の運転資金まで苦しくならないか心配」
そのような場合には、補助金申請だけでなく、資金繰りや金融機関との調整まで含めて、中小企業診断士などの専門家に相談して
みることをおすすめします。
補助金は「採択されて終わり」ではありません。
会社のお金を守りながら、計画した投資を最後までやり切るところまでが補助金活用です。
補助金は制度によって対象となる事業や経費が異なります。
自社で活用できる補助金があるか知りたい方は、まずはお気軽にご相談ください。
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