葬儀社経営コラム

葬儀社経営コラム第128号

クレームを“信頼”に変える!葬儀社のための落ち着いた対応術

葬儀という場面は、ご遺族にとって非常に強い感情が伴う時間です。喪失の悲しみ、不安、緊張、焦り──。
その中で進められる儀式では、ほんの些細な行き違いが「クレーム」として表面化してしまうこともあります。

例:

 ・花輪の親族名が間違っている

 ・案内された席順に納得がいかない

 ・司会者の紹介コメントが事実と異なる

どれも一般的には小さなミスかもしれませんが、ご遺族にとっては大きな“感情のひっかかり”です。

本コラムでは、葬儀社が直面しやすい場面を想定しながら、「クレームを信頼に変える落ち着いた対応術」について実務的な視点からご紹介します。


なぜ「落ち着いた対応」がクレームの印象を変えるのか?

葬儀のクレームの多くは、単なるサービスへの不満ではなく、不安や悲しみが怒りとして表れたものです。

このようなときに求められるのは、
✔ 素早い返答ではなく、
✔ 動揺せず、心に寄り添う“落ち着いた姿勢”。

❌ 正論や事実で押し返すのは逆効果
⭕ 「ご心配をおかけして申し訳ありません。改めて状況を確認させていただきます」といった一呼吸おいた対応が信頼回復の糸口になります。


対応ポイント①:感情を受け止め、すぐに謝意を伝える

花輪の名義ミスなど、細かな確認不足によるトラブルは「故人を軽んじられた」と強い感情を招くことも。

対応の基本:

 ・「大切な場でのことで、ご心情をお察しします」と謝意を伝える

 ・単なるミスではなく、“気持ち”に寄り添うことが重要

対応例:

 ・花輪の差し替えの即手配(式場・納入業者との連携も)

 ・式中での状況説明(司会コメントの修正など)

 ・式後のお詫び対応(お詫び文の送付・電話での説明)


対応ポイント②:状況確認よりも「まずは話を聴く」

「スタッフの態度が冷たい」「説明が足りない」などの曖昧なクレームに対しては、
まず相手の話を最後まで遮らずに聴くことが大切です。

❌「そんなつもりはなかった」
⭕「そのように感じさせてしまったこと、お詫び申し上げます」

相手の感情を否定せず受け止めることで、信頼回復の土台ができます。


対応ポイント③:誠意あるプロセスを“見せる”

時間に追われる現場では、とにかく謝って収めようとしがちですが、
その場しのぎの対応はかえって不信を招きます。

たとえば火葬場での誘導ミスの場合:

原因の特定(どのスタッフの判断だったか)

事実確認(説明はあったか?どのような内容だったか)

改善策の説明(同様のミスを防ぐための体制整備)

「原因 → 対応 → 再発防止」を相手に説明することで、誠実さが伝わります。


クレームを防ぐために社内で整えておきたいこと

● 情報の引き継ぎ体制の強化

日をまたぐ夜間搬送・当直業務では、引き継ぎミスがクレームの原因に。
→ 式当日の朝にスタッフ全員での再確認を習慣に。

● ミスが起こりやすい業務を洗い出す

例:

 ・花輪・供花・供物の名義・発注内容

 ・ご遺族の敬称や肩書の誤記

 ・香典返し・食事の数量ミス

→ チェックリスト化し、業務の抜け漏れを防止。

● ロールプレイングの実施

月1回でも、「実際のクレーム事例」をもとにロールプレイを行うことで、
現場の判断力や対応力が高まり、新人スタッフの“構え”も身につきます。


まとめ:クレーム対応は“式後”の評価を左右する

ご遺族は式典中は冷静ではないことも多く、
クレームは式後、数日経ってから届くこともあります。

そのときの対応こそが、
「この葬儀社にして良かったかどうか」の評価を決定づける瞬間。

一件一件のクレームを「面倒な対応」とせず、
“故人とご遺族に向き合う、最後の大切な時間”と捉えることができれば、
葬儀社としての信頼と価値は、より一層高まっていくでしょう。