葬祭事業者の事業再構築(1)

仕組み化・効率化・省力化が生き残りの鍵になる理由

大手葬儀社が、標準化された収益モデルを武器に出店を加速させています。
こうした環境の中で、地域の中小葬祭事業者がこれまで通り**個人の能力や経験、いわゆる「職人依存」**に頼った経営を続けることは、年々リスクが高まっています。

今、求められているのは
「誰がやっても一定の品質で回る、再現性のある仕組み」への転換です。

これは単なる業務改善ではありません。
国が掲げる労働生産性向上目標を達成するためにも、避けて通れない経営課題です。

本記事では、

  • なぜ今「仕組み化」が不可欠なのか
  • 国が求める労働生産性24%向上の意味
  • 葬儀社で実践できる具体的な省力化手法
  • 他業種に学ぶ仕組み化のヒント
  • 補助金・伴走支援の活用方法

について解説します。

1. 競争激化の中で「仕組み化」が必須となる背景

大手葬儀社は、
「このやり方をすれば、一定の収益が見込める」
という勝ちパターンを標準化し、それを横展開することで急速に店舗数を伸ばしています。

出店スピードが速い理由は明確です。
人や地域に依存しない、再現性の高いビジネスモデルを持っているからです。

一方、地域の中小葬儀社が、

  • ベテラン社員の経験
  • 特定の担当者のスキル

に業務を依存し続けているとどうなるでしょうか。

有効求人倍率が7.59倍という人手不足の中で、

  • 人が採れない
  • 引き継げない
  • ノウハウが属人化する

といった問題が発生し、経営は不安定になります。

これを克服するために必要なのが、
業務の標準化と省力化です。


2. 経済産業省が求める「労働生産性24%UP」の目標

国は、冠婚葬祭業を
人手不足が深刻で、集中的な支援が必要な「指定12業種」に位置づけています。

国が掲げる目標

  • 2029年度までに
  • 冠婚葬祭業の労働生産性
    (従業員一人あたりの付加価値額)を
  • 2024年度比で24%向上
  • 680万円/年に引き上げる

現在の水準は、約552万円/年
この差を埋めるために、単なる「頑張り」や「教育強化」だけでは足りません。

求められている考え方

重要なのは、
個人の能力向上に頼らないこと

業務を細分化し、

  • どこで時間がかかっているのか
  • どこがボトルネックなのか

を見える化し、
業務全体の「流れ」を再設計することが求められています。


3. 「流れの再設計」による省力化の具体的な手法

「流れの再設計」とは、
業務プロセスを最初から最後まで洗い出し、
人がやらなくてもよい作業を、ITや仕組みに置き換えることです。

例① 夜間対応・搬送業務の効率化

課題

  • 搬送情報が口頭や紙で分散
  • 到着後に聞き直しが発生
  • 事務所に戻ってから二重入力

解決策

  • 夜間コール情報をそのまま搬送チームへ自動配信
  • 故人情報・迎え先・帰着先をテンプレート化
  • 指示書を自動印刷・自動連携

効果

  • 1件あたり20~30分の事務作業削減
  • 二重入力の廃止
  • ミス・聞き直しの減少

例② 打合せ準備の標準化と削減

課題

  • 担当者ごとに進め方が違う
  • 忘れ物や確認漏れが発生
  • 過去の施行情報を探す時間が長い

解決策

  • プラン別チェックリストの自動生成
  • 式場レイアウト・注意点の自動表示
  • 過去データをすぐ参照できる仕組み

効果

  • 打合せ準備時間を
    30分 → 10分に短縮
  • ミスの防止
  • 新人でも一定品質を確保

こうした改善を積み重ねることで、
葬儀1件あたり約160分の時間削減が実現している事例もあります。

重要なのは、
削減した時間を「空けておく」のではなく、件数増加や付加価値業務に使うことです。


4. 他業種に見る仕組み化の成功事例(ラーメン店)

労働集約型産業であるラーメン業界でも、
倒産件数が増える一方、チェーン店は店舗数を伸ばしています。

あるラーメン店の事例

  • 寸胴鍋のサイズを2ランク小型化
  • 女性でもスープ作りが可能に
  • 残業のない労働環境を整備

結果として、
男女比が1対1になるまで人材活用が進みました。

ポイント

この事例の本質は、

  • 体力
  • 経験
  • 属人的なスキル

に頼るのではなく、
設備と業務を「誰でもできる形」に再設計したことです。

この考え方は、
葬儀業の現場にも十分応用可能です。


5. 国が提供する支援策(補助金と伴走支援)の活用

国は、冠婚葬祭業の仕組み化・省力化を後押しする支援策を用意しています。

補助金の活用

  • 中小企業省力化投資補助金
  • IT導入補助金

ITシステムや省力化機器(清掃ロボット等)の導入に活用できます。

伴走支援の活用

「システムを入れたけど、使われなくなった」
という課題に対応するため、
2025年以降は専門家による1年間の伴走支援も強化される予定です。

お金だけでなく、
人の支援を受けながら、仕組みを定着させることが可能になります。


まとめ

仕組み化・効率化・省力化は、
人手不足対策であると同時に、
成長戦略そのものです。

今こそ、

  • 業務の流れを見直し
  • 国の支援も活用しながら
  • 再現性のある経営体制を構築する

その一歩を踏み出すタイミングです。

次回は、
「単価・付加価値をどう高めるか」について掘り下げていきます。

小泉 悟志

小泉 悟志

エンディング総研代表・中小企業診断士

1969年生まれ。銀行勤務後、ベンチャー企業の取締役を数社経験。㈱エポックジャパン(現㈱家族葬のファミーユ)取締役を退任後、葬儀業界専門コンサルタントとして独立。施行件数のアップ、プランの見直しによる施行単価の改善などによる売上げ拡大を強みとする。近年は、葬儀社のM&A支援も多数手がける。

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