【中小企業診断士が直言】補助金申請で失敗する葬儀社の共通点と、採択率を上げる「書き方」のコツ
「地域の終活ニーズに応えるため、新しい家族葬専用ホールを建てたい」
「業務効率化と顧客満足度向上のため、葬儀管理システムやオンライン葬儀システムを導入したい」
こうした前向きな挑戦を支えてくれるのが、国や自治体の「補助金」です。
しかし、いざ申請してみると「不採択」の通知が届き、肩を落とする葬儀社の経営者様を数多く見てきました。
実は、補助金申請に落ちてしまう葬儀社には、驚くほど共通した「ある特徴」があります。
今回は、数多くの事業者様を支援してきた中小企業診断士の視点から、「補助金申請で失敗する葬儀社の共通点」、「採択率をグッと引き上げるための書き方」、そして意外と見落としがちな「加点項目と電子申請の盲点」まで徹底解説します。
1. 補助金申請で「失敗する」葬儀社の共通点
まずは、審査員(多くは葬儀業界に詳しくない中小企業診断士や公認会計士など)に「響かない」計画書を書いてしまう葬儀社の3大特徴です。
①「業界の当たり前」をそのまま書いてしまう
「近年、家族葬の需要が増えているため、家族葬ホールを新設します」
「高齢化社会に伴い、ニーズが高まっているため、システムのデジタル化を進めます」
これらは、葬儀業界内では100%正しい事実です。しかし、補助金の審査員から見ると、「どこの葬儀社でも言える、ありきたりな計画(=新規性や創意工夫がない)」と判断されてしまいます。
② 主観的で「数値データ」の裏付けがない
「地域の方々から愛されているため、新ホールを作れば必ず集客できます」といった、根拠のない「見込み」だけで計画書を埋めてはいませんか?
審査員が知りたいのは、客観的な事実です。「なぜそのエリアなのか」「競合他社と比べて何が優位なのか」がデータで示されていないと、実現可能性が低いとみなされます。
③ 「やりたいこと(導入する設備)」の説明ばかりになっている
「〇〇という最新の搬送車を買います」「〇〇というシステムを入れます」という、スペックの説明ばかりに終始してしまうケースです。
補助金は「買い物を支援する制度」ではなく、「その買い物によって、会社がどう成長し、地域社会や雇用にどう貢献するかを支援する制度」です。「何を買うか」より「買った後、どう変わるか」が抜けている計画書は評価されません。
2. 中小企業診断士が教える!採択率を上げる「書き方」の極意
では、審査員の心を動かし、「この葬儀社を応援したい!」と思わせる計画書にするにはどうすればいいのでしょうか。今日から実践できる3つのステップを紹介します。
ステップ①:自社特有の「強み(SWOT分析)」を具体化する
他社との明確な違いをアピールします。単に「丁寧な接客」ではなく、数字や実績を交えて具体的に書くのがコツです。
- ✕ 弱い例: 「地域に密着した、丁寧な葬儀が強みです」
- ◯ 強い例: 「創業〇〇年、地域での施行実績〇〇件。会員制度の登録者数は〇〇名にのぼり、地域の終活相談窓口としての認知度が〇%(自社調べ)と、地域コミュニティにおいて強固な信頼基盤を有している」
ステップ②:地域の「課題」と「自社のアクション」をデータで結びつける
なぜその事業が必要なのか、マクロ・ミクロ両方の視点から「市場の裏付け」を示します。
- マクロデータ: 自社エリア(〇〇市)の今後の高齢化率の推移や世帯構成の変化(単身高齢世帯の増加率など)を自治体の公表データ等から引用する。
- ストーリーの構築:
「単身高齢者が〇%増加している〇〇市において、従来の大型葬ではなく、事前の終活から事後の手続きまで一貫してサポートする『ワンストップ型家族葬サービス』が不足している。そこで、当社の強みである『事前相談の丁寧さ』を活かし、〇〇エリアに専用相談スペースを併設した新ホールを開設する」
ステップ③:投資対効果を「定量(数値)」と「定性」で示す
補助金を活用した結果、どのような変化が生まれるのかを「具体的」に記述します。
| 項目 | 具体的な書き方の例 |
| 定量的効果(数値) | 「新ホールの開設により、年間施行数を〇件から〇件(〇%増)へ拡大し、3年後の売上高を〇%増加させる。また、これに伴い新規雇用を〇名創出する。」 |
| 定性的効果(状態) | 「オンライン相談・事前見積もりシステムを導入することで、ご遺族が最も精神的に負担の大きい『急な意思決定』を避け、納得のいくお見送りプランを事前に、かつ自宅で落ち着いて検討できる環境を提供する。」 |
3. 合否を分ける「加点項目」は1つでも多く取得する
補助金の審査は、100点満点中何点取れるかという「減点・加点方式」で競われます。どれだけ素晴らしい事業計画書を書いても、ライバルが「加点項目」をフルで満たしている場合、それだけで大きな差をつけられてしまいます。
補助金によって加点項目と認められる項目は違いますし、中には取得に時間がかかる認定制度等もありますが、パートナーシップ構築宣言のように即日、無料で宣言・登録できる制度もあります。しかも、ひな型や同業者の宣言事例がサイト上で確認できるので、「申請するなら絶対にやっておくべき加点」の代表格です。
「よくわからないから」と加点項目を無視して申請するのは、自らハンデを背負って戦うようなものです。特に一度不採択となった後に再申請を行う場合は、準備期間も十分あるはずなので、使える加点はすべて取得しましょう。
4. 最後の最後で「不採択」になる、電子申請の落とし穴
国の主要な補助金は、ほぼすべて「Jgrants(ジェイグランツ)」などの電子申請システムを使ってWeb上で申請します。
しかし、「書類の中身は完璧だったのに、システム上の凡ミスで一発アウト(門前払い)」という、最ももったいない失敗をする葬儀社が後を絶ちません。以下のチェックリストを必ず確認してください。
① GビズIDプライムアカウントの準備は間に合っているか?
電子申請には「GビズIDプライム」という法人用のアカウントが必要です。オンラインでの即日取得も可能ですが、郵送の場合は、数日から、混雑期には2〜3週間かかることもあります。「計画書ができたから今夜申請しよう」と思っても、アカウントがなければスタートラインにすら立てません。余裕を持って真っ先に取得してください。
紛らわしいことに、GビズIDにはプライムの他に、メンバー、エントリーというアカウントも存在します。GビズIDは取得済と安心していたら、実はプライムではなかったために申請に間に合わなかったというケースもあるので、注意しましょう。
② 【超重要】「説明用資料(任意)」の添付をフル活用する
電子申請のシステムでは、基本となる申請書(事業計画書)の提出に加え、「その他、説明に必要な資料(任意)」として別紙の添付が認められているケースがほとんどです。
「任意だから出さなくていいや」とスルーするのは非常にもったいないです。
文字ばかりになりがちな申請フォームに対し、この任意資料をうまく使うことで、審査員の理解度が跳ね上がります。以下のビジュアル資料をPDF化し、積極的に添付しましょう。
添付を強く推奨するビジュアル資料の例:
- 人口推移や市場ニーズを示す「グラフ」(地域の高齢化データなど)
- 現在の課題を示す「写真」(老朽化した設備や、手書き・紙管理で煩雑になったバックオフィスの実態など)
- 導入予定の機器やシステムのイメージ図・画面キャプチャ
- 新ホールの「設計図」や「外観・内観の完成イメージパース」
業界外の審査員に「どんな課題があり、どんな新しいサービスを始めようとしているのか」を直感的にイメージしてもらうために、この任意添付枠は最大の武器になります。
③ 「コピペ」による申請情報の入力ミス
Wordなどで下書きした事業計画書のデータを、Webの申請フォームにコピペして入力する際、金額の桁数を間違えたり(万単位と円単位の間違いなど)、別の項目の文章を貼り付けてしまったりするミスが多発しています。
特に「補助金申請額」と「事業計画書内の投資額」の整合性が合わないと、システム上でエラーにならなくても、審査段階で不整合として落とされる原因になります。
5. 葬儀社ならではの「審査員(門外漢)への配慮」
最後に、非常に重要なポイントをお伝えします。
補助金の審査員は、世代も性別も業務歴もまちまちです。中には、葬儀に立ち会った経験がほとんどない審査員もいるという前提で書くことです。
「搬送」「安置」「湯灌(ゆかん)」「一日葬」「直葬」といった、私たちにとっては当たり前の専門用語。これらについても、必要に応じて「ご遺体を病院から安置場所へ移動させる『搬送プロセス』において〜」のように、誰が読んでも一発で理解できる平易な言葉遣いを心がけてください。
まとめ:事業計画書は「未来の経営指針」になる
補助金の事業計画書を作成することは、単に「お金をもらうための作業」ではありません。
「自社の強みを見つめ直し、これからの時代の変化にどう適応していくか」を言語化する、極めて有意義な経営改革のプロセスです。
加点項目をきっちりクリアし、写真やグラフを盛り込んだ「わかりやすい添付資料」を用意した上で、電子申請の期限に余裕を持って臨めば、採択率は確実に高まります。
「自社だけで書くのはどうしても難しい」
「客観的なデータ収集や、審査員に伝わるストーリー作りに行き詰まっている」
そのようなときは、ぜひ一度、中小企業診断士などの専門家への相談も検討してみてください。第三者の目を入れることで、自社では気づけなかった素晴らしい「強み」が見つかるはずです。
皆様の前向きな挑戦が、無事に採択という実を結ぶことを心より応援しております。


