葬儀社経営者が読むべき「自社のPL」5つのチェックポイント

この記事の結論

葬儀社の損益計算書(PL)を経営改善に活かすには、①粗利率、②人件費比率、③施設・車両費比率、④広告宣伝費対売上比率、⑤営業利益率の5つを定期的にチェックすることが重要です。業界平均と自社数値を比較し、どのコストが利益を圧迫しているかを特定することで、具体的な改善アクションにつながります。

📋 目次

はじめに|葬儀社こそPLを正しく読む必要がある理由

葬儀業界は、他業種と比較して売上の季節変動・件数変動が大きく、かつ人件費・施設費・車両費など固定コストが重くのしかかる構造的な特徴があります。にもかかわらず、多くの葬儀社経営者が「月次の数字は顧問税理士に任せている」「決算書は年に一度確認するだけ」という状況に陥りがちです。

しかし、損益計算書(PL:Profit and Loss Statement)は経営の”体温計”です。日常的にPLを読み解くクセをつけることで、利益を圧迫しているコスト構造の問題を早期に発見し、手を打つことができます。

本記事では、葬儀社経営者が自社PLを見るときに必ず確認すべき5つのチェックポイントを、業界の目安数値とともに解説します。

チェックポイント①|粗利率(売上総利益率)

粗利率とは何か

粗利率=(売上高 − 売上原価)÷ 売上高 × 100

葬儀社における売上原価は、主に祭壇・棺・骨壷などの物品費、外注火葬費、仕出し料理費、生花費などが該当します。これらは件数に連動して増減する変動費の中心です。

業界目安と見方

規模・業態粗利率の目安
中小独立系葬儀社55〜70%
互助会・会員制葬儀社50〜65%
家族葬特化型60〜72%

粗利率が50%を下回っている場合は、物品の仕入れコスト・外注費が高すぎる可能性があります。仕入れ先の見直し・相見積もり、あるいはセット商品の再設計が有効です。

⚠ チェック時の注意点

家族葬・一般葬・社葬など葬儀の種別ごとに粗利率は大きく異なります。全体の粗利率だけでなく、葬儀種別・プランごとの粗利率を把握することが精度の高い経営判断につながります。

チェックポイント②|人件費比率

人件費比率とは何か

人件費比率=人件費合計 ÷ 売上高 × 100

葬儀社の人件費には、正社員・パート・アルバイトの給与に加え、社会保険料・賞与・退職引当金が含まれます。葬儀業は24時間365日対応が必要であるため、シフト管理の複雑さから人件費が膨らみやすい構造にあります。

業界目安と見方

規模・業態人件費比率の目安
小規模葬儀社(年商〜3億円)30〜40%
中規模葬儀社(年商3〜10億円)28〜38%
大規模・多店舗展開25〜33%

人件費比率が40%を超えている場合、以下の要因が考えられます。

  • 件数に対してスタッフが過剰(稼働率の低下)
  • 時間外労働が常態化しており残業代が嵩んでいる
  • 外注で対応できる業務を内製しているコスト構造
  • 繁閑差が大きいのに固定社員主体のシフト体制

件数あたりの人件費(1件あたり人件費=人件費合計÷施行件数)を算出すると、スタッフ配置の効率性をより直感的に把握できます。

チェックポイント③|施設・車両費比率

施設・車両費比率とは何か

施設・車両費比率=(賃借料+減価償却費+車両維持費)÷ 売上高 × 100

自社斎場を保有する葬儀社では、建物の減価償却費や固定資産税が大きな固定費となります。賃貸斎場の場合は賃借料が毎月の重荷になります。また、寝台車・霊柩車・マイクロバスなどの車両関連費(リース料・燃料・保険・車検)も見落としがちなコストです。

業界目安と見方

業態施設・車両費比率の目安
自社斎場保有(自己所有)10〜18%
自社斎場保有(賃貸)12〜20%
公営・民間斎場借用中心5〜12%

施設・車両費比率が20%を超えている場合は、施設の稼働率・稼働件数が不足している可能性があります。斎場の稼働率(稼働日数÷営業日数)と合わせて確認し、施設のフル活用・多目的利用(法事・終活セミナー等)を検討しましょう。

チェックポイント④|広告宣伝費対売上比率

広告宣伝費比率とは何か

広告宣伝費比率=広告宣伝費 ÷ 売上高 × 100

葬儀社の集客コストは、折込チラシ・ポスティング・地域情報誌などのオフライン広告から、GoogleリスティングやSEO・比較サイト掲載費などのデジタル広告まで多岐にわたります。近年は比較サイトへの成果報酬型費用が膨らむ傾向があります。

業界目安と見方

集客チャネルの傾向広告宣伝費比率の目安
地域密着・紹介・互助会中心2〜5%
デジタル・比較サイト中心6〜12%
新規参入・積極拡大期10〜18%

重要なのは比率だけでなく「1件あたり獲得コスト(CPO)」を把握することです。

1件あたり獲得コスト=広告費合計 ÷ 広告経由の施行件数

葬儀社の平均単価(施行単価)が80万円であれば、CPOが15万円を超えている広告チャネルは費用対効果を疑う必要があります。チャネル別にCPOを計算し、効果の薄い広告費を削減・再配分することが利益改善の直接的なアクションになります。

チェックポイント⑤|営業利益率

営業利益率とは何か

営業利益率=営業利益 ÷ 売上高 × 100

営業利益は、売上から売上原価・販管費(人件費・広告費・施設費など)をすべて差し引いた後の利益です。葬儀社の「本業の稼ぐ力」を端的に示す最も重要な指標の一つです。

業界目安と見方

経営状況営業利益率の目安
優良・高収益体質15%以上
安定経営8〜15%
改善要・要注意3〜8%
赤字リスク・要緊急対応3%未満

営業利益率が低い場合、前述①〜④のどのコストが問題なのかを特定することが先決です。「売上を増やす」よりも「コスト構造を整える」ほうが、短期で利益を改善できるケースが多くあります。

また、前年同期比・同業他社比較(業界平均との比較)の2軸で営業利益率を見ることで、自社の立ち位置をより正確に把握できます。

5つを一覧で管理するPLチェックシートの使い方

5つのチェックポイントを毎月一覧で確認するために、以下のような簡易チェックシートを活用することをおすすめします。

チェック項目計算式業界目安自社今月前月比判定
①粗利率(売上−原価)÷売上55〜70%  %  %◎ / △ / ✕
②人件費比率人件費÷売上28〜40%  %  %◎ / △ / ✕
③施設・車両費比率(賃借料+減価償却+車両費)÷売上5〜20%  %  %◎ / △ / ✕
④広告宣伝費比率広告費÷売上2〜12%  %  %◎ / △ / ✕
⑤営業利益率営業利益÷売上8〜15%  %  %◎ / △ / ✕

このシートを月次で更新し、3ヶ月トレンドで見ることが重要です。単月の数字は件数変動による歪みがあるため、移動平均で傾向を把握することで、本質的なコスト構造の変化を捉えることができます。

よくある質問(FAQ)

Q. PLと試算表の違いは何ですか?

試算表(月次試算表)は会計ソフトから出力される途中経過の帳票で、PLはその中の損益部分を指します。試算表をもとに、売上・原価・費用・利益の構造を読み解いたものがPLです。経営判断には月次試算表を活用し、PL的な視点で数字を分析する習慣が重要です。Q. 顧問税理士に任せているのでPLはわからなくてもよいですか?

税理士の役割は税務申告の正確性を確保することです。経営の意思決定に必要なPL分析は、経営者自身が主体的に行う必要があります。税理士に「月次で5つの指標を計算して報告してほしい」と依頼する、あるいは経営支援に強い税理士・中小企業診断士に相談することをおすすめします。Q. 葬儀社の適正な施行単価はどのくらいですか?

地域・業態によって大きく異なりますが、一般的な葬儀社の平均施行単価は60〜120万円程度が多い傾向にあります。重要なのは単価の絶対値よりも「単価×件数=売上」「売上×粗利率=粗利額」のバランスです。件数を追うあまり単価を下げすぎると粗利が確保できず、経営が苦しくなるケースがあります。Q. 同業他社の財務データはどこで確認できますか?

中小企業庁が公表している「中小企業実態基本調査」や、TKC・日本政策金融公庫が発表している業種別財務データを参考にすることができます。また、上場している大手葬儀社(燦ホールディングス・ティアなど)のIR資料も業界動向の参考になります。

まとめ

葬儀社のPLを経営改善に活かすための5つのチェックポイントをまとめます。

  1. 粗利率:55〜70%を目安に、仕入れ・外注コストの適正化を図る
  2. 人件費比率:28〜40%を目安に、件数あたり人件費で効率性を測る
  3. 施設・車両費比率:稼働率と合わせて確認し、固定費の回収力を把握する
  4. 広告宣伝費比率:チャネル別CPOで費用対効果を評価・最適化する
  5. 営業利益率:8%以上を目安に、本業の稼ぐ力を定期的にモニタリングする

PLは「過去の結果」を示すものですが、定期的にチェックすることで「未来の経営判断」に活かすことができます。月次で5つの指標を確認するだけでも、経営の解像度は大きく上がります。

自社のコスト構造を正しく理解し、収益体質の改善にお役立てください。もし数字の読み方や改善策について個別にご相談されたい方は、お気軽にお問い合わせください。


※本記事に記載の業界目安数値は一般的な参考値です。自社の経営判断には、エンディング総研までご相談ください。

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