葬儀事業者の事業再構築(3)
目次
地域における影響力拡大
はじめに ― シリーズの位置づけ
本シリーズでは、価格競争と単価下落が進む葬儀業界において、地域密着型葬儀社が持続的に成長するための「事業再構築」の具体策を段階的に解説しています。
前回(第2回)では、「関連新分野への参入」をテーマに、生前(終活)売上を事業公式に組み込む重要性を解説しました。葬儀施行という“点”のビジネスから、生前から死後までを支える“線”のビジネスへと転換することが、価格競争から脱却する第一歩であることを示しました。
本稿では、その次の段階として「地域における影響力拡大」を取り上げます。終活事業への参入によって顧客接点を広げた先に求められるのは、経営基盤そのものの拡張です。M&Aやグループ化を通じて地域内での存在感を高め、経営の安定性と成長性を同時に確保する戦略について解説します。
目次
- 社長高齢化と事業承継ニーズの高まり
- エリア内M&Aがもたらす事業拡張のチャンス
- 事業を多角化・グループ化する4つのメリット
- 「人材育成の硬直化回避」という重要な人事戦略
- M&A・新規事業進出で活用できる補助金
1.社長高齢化と事業承継ニーズの高まり
地域の中小企業では、社長の高齢化が深刻な課題となっています。2023年時点で50歳以上の社長の割合は81.0%に達しており、事業承継を検討する企業は増加傾向にあります。
後継者が見つからず廃業を選択せざるを得ない企業も少なくありません。葬儀社がエリア内で事業を引き継ぐことは、単なる拡大戦略ではなく、地域の雇用や生活サービスを守る「地域貢献型投資」とも言えます。
2.エリア内M&Aがもたらす事業拡張のチャンス
M&Aは、ゼロから新規事業を立ち上げるよりも、既存の従業員や顧客基盤を引き継げるため、スピーディーかつ現実的な拡張手段です。
異業種多角化
介護施設、不動産会社、仏壇店、生花店など、葬儀に関連する地域企業をグループ化することで、顧客に対して一気通貫のサービスを提供できる体制が整います。これにより、「点」ではなく「線」で地域を支える企業へと進化できます。
円滑な事業承継
地域ネットワークを活用して直接承継を進めることができれば、仲介手数料を抑えながらスムーズな事業承継が可能です。地域密着企業ならではの優位性が発揮される領域です。
3.事業を多角化・グループ化する4つのメリット
1.リスク分散
葬儀施行部門のみに依存せず、複数の収益源を持つことで経営リスクを軽減できます。
2.節税対策
グループ内の収益構造を活用することで、税務面での最適化が可能になります。
3.資金循環の効率化
100%子会社からの配当は原則非課税となるため、グループ内で資金を迅速に再投資できます。
4.人材育成と人事の硬直化回避
組織拡張は、人材戦略においても大きな意味を持ちます。
4.「人材育成の硬直化回避」という重要な人事戦略
単一事業のみの組織では、役職が固定化しやすく、若手の昇進機会が限定されます。その結果、モチベーション低下や離職につながる可能性があります。
グループ化によって事業体や役職ポストを増やすことで、幹部の配置転換や新規ポスト創出が可能となります。これにより若手にも明確なキャリアパスが提示でき、組織全体の活性化につながります。
5.M&A・新規事業進出で活用できる補助金
M&Aや新規事業には投資が伴いますが、国の補助制度を活用することでリスクを抑えることが可能です。
- 事業承継補助金(最大1,000万円)
- 新事業進出補助金(最大9,000万円)
適切な制度活用により、自己資金だけでは困難だった事業再構築を現実的に進めることができます。
おわりに ― 次回予告
終活事業への参入により顧客接点を拡張し、M&Aやグループ化によって経営基盤を強化する。ここまでが、地域における影響力拡大の戦略です。
しかし、事業を拡張しても、それを担う人材が確保できなければ持続的成長は実現しません。
次回(第4回)は、「拡張型人材採用・人材活用」をテーマに、人口減少社会において企業が“選ばれる側”となるための採用戦略と働き方改革について詳しく解説します。デジタル活用、分業制、外国人材の可能性など、未来を見据えた組織戦略を提示します。
地域に必要とされ続ける企業となるために。
事業拡張の次に求められる「人材戦略」へと議論を進めていきます。

