事前相談でトラブルを防ぐ!葬儀社が実践すべき5つの対話術
はじめに:相談対応の質が、葬儀社への信頼を左右する
葬儀をめぐるトラブルの多くは、契約前の説明不足や認識のズレから生じます。
国民生活センターの統計によると、葬儀サービスに関する相談件数は2024年度に978件と過去最多水準に達しました。
その内訳には「提示見積もりと異なる請求」や「説明不足によるオプション追加」など、信頼を損なう事例も少なくありません。
こうした背景から、契約前の“相談対応”こそが信頼構築の第一歩といえます。
本記事では、葬儀社が実践できる「5つの対話術」を紹介し、トラブルを未然に防ぎながら“選ばれる葬儀社”になるためのヒントをお伝えします。
目次
対話術①:費用レンジと変動要因を丁寧に説明する
葬儀費用は、規模・祭壇・人数・距離などによって大きく変わります。
単に「○○円です」と伝えるだけでは、後日の請求時に「聞いていない」という誤解を生みかねません。
改善ポイント
- 「基本プランは○○万円からですが、参列者数や祭壇グレードで変動します」
- 「追加オプションを含めると○○〜○○万円程度になるケースもあります」
- 「見積書には“基本構成”と“追加項目”を明確に分けてご説明します」
金額を“固定値”ではなく“幅”で伝えることで、透明性と誠実さを感じてもらいやすくなります。
対話術②:今日は“相談”で契約ではないことを明示する
来社されたお客様の多くは、まだ葬儀社を決めかねている段階です。
その心理を理解し、「今日は契約の場ではない」と明示することが、安心感を生み出します。
言い回し例
- 「本日は説明とご希望の整理を目的としており、契約を決める必要はございません」
- 「署名欄は確認用です。正式なご契約は、最終見積のご確認後にお願いいたします」
“相談の場”であることを伝えるだけで、無理なく自然に会話が進みます。
対話術③:優先したい価値軸を一緒に整理する
「費用を抑えたい」「故人らしいお見送りをしたい」など、葬儀への価値観は人それぞれ。
相談時には、お客様と一緒に“何を大切にしたいか”を整理することがポイントです。
質問の工夫例
- 「費用を重視されますか?それとも内容面を優先されますか?」
- 「料理やご安置期間、宗教形式などもご希望があれば伺います」
このような対話を通して“軸”を明確にすれば、見積書の内容にも一貫性が生まれ、納得感のあるご提案につながります。
対話術④:家族間の共有と意思統一を促す
トラブルの多くは、契約者と家族の間の認識のズレが原因です。
「本人はこう言っていた」「そんな話は聞いていない」といった行き違いを防ぐには、家族全体での情報共有が欠かせません。
工夫例
- 「この資料をご家族と共有いただけると、後々の行き違いが防げます」
- 「ご家族で話し合われてから、再度ご来社いただく形でも大丈夫です」
家族全員が納得した上で進める姿勢が、誠実な印象を与えます。
対話術⑤:押しつけず、“またの機会”を示す姿勢
「今日決めてください」という圧迫感は、信頼を大きく損ねます。
むしろ、余裕をもった言葉が“安心して相談できる葬儀社”という印象を残します。
言い回し例
- 「必要なタイミングが来たときに、また思い出していただければ幸いです」
- 「他社様と比較されるのは当然です。ご不明点があればいつでもご相談ください」
無理に契約へ導かず、誠実に“距離を保つ”姿勢こそが信頼の証です。
まとめ:相談対応こそ、信頼構築の第一歩
葬儀に関する相談件数は年々増加し、2024年度には過去最多の978件を記録しました。
その多くが「相談時の説明不足」によるものです。
契約書や広告表示の整備も大切ですが、最初の相談対応こそ最大のトラブル予防策。
以下の5つを実践することで、誠実な企業姿勢を伝えることができます。
- 費用レンジと変動要因を丁寧に説明
- “今日は相談”であることを明示
- 優先したい価値軸を一緒に整理
- 家族での共有・意思統一を促す
- 押しつけず“またの機会”を示す姿勢
最近では、景品表示法違反で課徴金命令が出る事例もあり、業界全体に「透明性の高い対応」が求められています。
相談対応の丁寧さ=葬儀社の信頼度。
小さな対話の積み重ねが、地域で長く選ばれる葬儀社をつくります。


