葬儀事業者の事業再構築(5)

補助金の有効活用

― 構造転換を“実行”に移すための資金戦略 ―

はじめに ― シリーズの位置づけ

本シリーズでは、価格競争と単価下落が進む葬儀業界において、地域密着型葬儀社が持続的に成長するための「事業再構築」の具体策を段階的に解説してきました。

第1回では業界構造の変化と構造転換の必要性を提示し、
第2回では「関連新分野への参入」による生前売上の確保、
第3回では「地域における影響力拡大」としてM&A・グループ化戦略、
第4回では「拡張型人材採用・人材活用」による実行体制の構築を取り上げました。

そして最終回となる本稿では、
これらの戦略を現実のものにするための「資金戦略」、すなわち補助金の有効活用について解説します。

ITシステム導入、新分野参入(終活サポート)、M&Aによる多角化——。
いずれも構造転換には先行投資が不可欠です。

幸い、国は冠婚葬祭業を「人手不足が深刻な重点12業種」の一つに指定し、「省力化投資促進プラン」に基づく支援を強化しています。

本記事では、国の支援策を最大限に活用し、リスクを抑えながら成長投資を実行する方法を整理します。


目次

1.冠婚葬祭業が国の重点支援対象となった背景
2.省力化・IT導入に活用できる主な補助金
3.事業再構築と多角化を可能にする補助金
4.補助金活用の最大のメリット:「伴走支援」
5.投資リスクを軽減する補助金活用戦略


1.冠婚葬祭業が国の重点支援対象となった背景

冠婚葬祭業は対人接客を中心とする労働集約型産業であり、全産業と比較して労働生産性が低いという課題を抱えています。

加えて、葬儀業の有効求人倍率は**7.59倍(令和6年12月)**と極めて高水準です。
人手不足により施行を断るケースも発生し、経営に直接的な影響を及ぼしています。

この状況を受け、経済産業省は

  • 2029年度までに労働生産性を24%向上
  • 従業員一人あたり付加価値額680万円/年を目標

とする方針を掲げ、集中的な支援を行っています。

補助金は、その目標達成を後押しする具体策です。


2.省力化・IT導入に活用できる主な補助金

労働生産性向上は「業務の流れの再設計」によって実現します。

① 中小企業省力化投資補助金

人手不足解消を目的とした設備投資を支援します。

カタログ注文型

  • 清掃ロボット
  • 券売機
  • 自動精算機 など
  • 最大1,000万円(賃上げで1,500万円)

一般型

  • オーダーメイド設備・システム
  • 夜間コール自動配信システム など
  • 最大8,000万円(賃上げで1億円)

葬儀社の現場課題に合わせた設計が可能です。


② IT導入補助金

葬儀業特化ソフトや会計・労務管理ソフトの導入に活用できます。

活用例

  • 顧客管理(問合せ〜施工後フォローまで一元管理)
  • 受注管理・請求管理
  • 葬儀・供物・法事請求書発行システム

業務の属人化を防ぎ、再現性の高い運営を実現します。


3.事業再構築と多角化を可能にする補助金

構造転換を伴う大きな投資にも支援策があります。

● 事業承継補助金

M&Aを伴う事業承継に活用
最大1,000万円

● 新事業進出補助金

終活サポート事業など新分野展開
最大9,000万円

補助金申請は単なる資金確保ではありません。
経営ビジョンを具体化し、計画を精緻化するプロセスでもあります。


4.補助金活用の最大のメリット:「伴走支援」

補助金の最大の課題は、

導入した設備やITが定着しないこと

でした。

これを解消するため、2025年以降は「伴走型支援」が強化されています。

  • 最長1年間の継続支援
  • 業務棚卸しからIT導入まで一体サポート
  • 導入後の定着支援

補助金は「お金」だけでなく、「人による支援」もセットで活用する時代に入っています。


5.投資リスクを軽減する補助金活用戦略

国は今後5年間で、過去3年平均の1.5倍にあたる年平均110件以上の採択をKPIとして掲げています。

これは、冠婚葬祭業への明確な支援シグナルです。

補助金活用は、

  • 新規事業参入リスクの軽減
  • 大規模IT投資の負担軽減
  • 成長戦略の前倒し実行

を可能にします。

構造転換を構想で終わらせないために。
資金戦略は、実行フェーズの要です。


おわりに ― 構造転換を「実行」へ

終活事業への参入。
地域での影響力拡大。
人材戦略の高度化。

これらを支えるのは、適切な投資とその実行力です。

補助金は、その実行を後押しする現実的な手段です。


エンディング総研では、補助金サポートのご相談を受け付けています。
申請の可否や制度の選び方など、まずはご質問からでも構いません。

構造転換を「構想」で終わらせないために。
具体的な一歩をご一緒に検討いたします。

小泉 悟志

小泉 悟志

エンディング総研代表・中小企業診断士

1969年生まれ。銀行勤務後、ベンチャー企業の取締役を数社経験。㈱エポックジャパン(現㈱家族葬のファミーユ)取締役を退任後、葬儀業界専門コンサルタントとして独立。施行件数のアップ、プランの見直しによる施行単価の改善などによる売上げ拡大を強みとする。近年は、葬儀社のM&A支援も多数手がける。

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