葬儀事業者の事業再構築(4)
目次
拡張型人材採用・人材活用
はじめに ― シリーズの位置づけ
本シリーズでは、価格競争と単価下落が進む葬儀業界において、地域密着型葬儀社が持続的に成長するための「事業再構築」の具体策を段階的に解説しています。
第1回では業界構造の変化と構造転換の必要性を提示し、
第2回では「関連新分野への参入」による生前売上の確保、
第3回では「地域における影響力拡大」としてM&Aやグループ化による経営基盤強化について解説しました。
そして本稿(第4回)では、拡張した事業を“実行できる組織”をつくるための戦略、すなわち「拡張型人材採用・人材活用」を取り上げます。
葬儀業界における人手不足は極めて深刻です。葬儀師・火葬係の有効求人倍率は**7.59倍(令和6年12月)**に達しており、企業が「選ぶ側」ではなく「選ばれる側」へと立場を転換しなければ、生き残りは困難です。
事業を拡張しても、人材がいなければ成長は実現しません。
本記事では、採用活動のデジタル化、働き方改革による定着率改善、そして将来を見据えた外国人材活用まで、実践的な戦略を解説します。
目次
- 「選ばれる企業」となるための採用戦略
- デジタルネイティブ世代にリーチする採用チャネル
- 人材を定着させる働き方改革事例
- 将来を見据えた外国人採用の必要性と価値
- 人材の有効活用を促す動画マニュアルの導入
1.「選ばれる企業」となるための採用戦略
全国で毎年約80万人の人口が減少する中、労働力不足は構造的課題です。
特に葬儀業界は、不規則な勤務や土日祝日の出勤が多いことから、人材確保が難しい業種とされています。
この状況を打開するには、次の二軸が必要です。
① 採用チャネルの拡張
業界イメージを刷新し、自社の魅力を正しく伝えるためのデジタルチャネルの確立。
② 労働環境の抜本的改善
分業制や休暇制度の整備など、仕組みそのものの改革による定着率向上。
採用と定着を同時に設計することが不可欠です。
2.デジタルネイティブ世代にリーチする採用チャネル
20代・30代の採用強化には、彼らが日常的に使うツールを活用します。
● YouTube採用
動画は紙媒体よりも情報量が多く、リアルな職場の雰囲気を伝えられます。
ポイントは「編集ゼロ・本数重視」。
・社員の一日密着
・若手スタッフの本音
・実際の業務の流れ
こうした“透明性の高い発信”が信頼につながります。
● LINE公式アカウント
若年層はLINEでの相談に慣れています。
「LINEで何でも聞いてください」
この姿勢が応募前の心理的障壁を下げ、潜在層との接点を広げます。
3.人材を定着させる働き方改革事例
採用後の離職を防ぐには、業務の仕組みを変える必要があります。
● 分業制の導入
従来はディレクターが複数機能を兼任していました。
これを分業化し、アシスタントを配置。
その結果、ある企業では離職率が40%から7%へ改善しました。
分業化は
・残業削減
・専門性向上
・顧客満足度向上
を同時に実現します。
● 休暇制度の整備
月10日前後の休暇取得を可能にし、
スキル向上が昇給につながる「育成残業制度」を導入。
努力が評価される設計が若手の定着につながります。
4.将来を見据えた外国人採用の必要性と価値
人口減少が続く中、外国人材活用は現実的な選択肢となります。
● バックヤード業務から段階導入
高度な仏事知識を要しない業務からスタート。
● 多文化対応力の強化
外国人材は人手不足対策にとどまらず、
「多文化対応できる葬儀社」という新たな価値創造につながります。
差別化戦略としても重要な要素です。
5.動画マニュアルによる人材活用の高度化
教育の効率化には動画マニュアルが有効です。
・業務の標準化
・教育時間の短縮
・品質の均一化
文章よりも直感的に伝わるため、再現性が高まります。
結果として、人材育成の省力化と生産性向上が実現します。
おわりに ― 次回(最終回)予告
終活事業への参入、M&Aによる影響力拡大、そして拡張型人材戦略。
これらを実行するには、成長投資が不可欠です。
最終回(第5回)では、
「補助金の有効活用」
をテーマに、
・なぜ冠婚葬祭業が国の重点支援対象となったのか
・省力化・IT導入に活用できる補助金
・事業再構築を支える制度設計
・最大の価値である「伴走支援」
について解説します。
構造転換を実行するための“資金戦略”へ。
シリーズ最終回では、成長投資を現実化する具体策を提示します。

