「終活」から「生き活(いきかつ)」へ
― 葬儀社が提供できる“人生価値プロジェクト”という新しい役割 ―
「終活」という言葉は、いまや社会にすっかり定着しました。
エンディングノートの作成、遺言や葬儀の事前相談、財産や身の回りの整理など、葬儀社にとっても終活支援は重要な事業領域となっています。
一方で、現場ではこんな声も多く聞かれます。
- 終活の話題は重く、相談のきっかけがつくりにくい
- 高齢者向けサービスと見られ、市場が広がりにくい
- 価格や内容で比較されやすい
こうした課題を感じる中で、近年注目され始めている考え方が
「生き活(いきかつ)」です。
これは終活を否定するものではなく、
終活の“一歩手前”にある、新しい価値提案だと言えます。
目次
1.終活が抱える構造的な限界
終活は本来、「よりよく生きるための準備」であるはずです。
しかし実際には、
- 亡くなった後の手続き
- 家族に迷惑をかけないための整理
といった、“終わり”を起点とした話題になりがちです。
その結果、相談のタイミングは
病気・高齢・配偶者との死別など、
人生の余裕が少ない局面に集中します。
この構造では、終活はどうしても
受け身のサービスになりやすく、
価格や条件で比較されやすい領域になってしまいます。
ここに、終活ビジネスが抱える一つの限界があります。
2.生き活とは何か ― 視点を前向きに転換する
生き活とは、
「どう死ぬか」ではなく、
「どう生きてきたか」「これからどんな人生を歩みたいか」
に焦点を当てる考え方です。
人生を振り返り、
価値観や転機を言葉にし、
家族や大切な人と共有する。
そのプロセスそのものが、生き活の中心になります。
生き活は、特別な事情がなくても始められます。
元気なうちに自分の人生を整理し、意味づけを行うことで、
結果として終活の質も自然と高まっていきます。
終活と生き活は対立するものではなく、連続した関係なのです。
3.なぜ、葬儀社が生き活を担えるのか
人生価値を扱うサービスと聞くと、
カウンセラーや士業、教育分野を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、人生の物語に最も触れてきた業種は、葬儀社です。
葬儀の場では、
故人の歩んできた人生が語られ、
家族や友人の言葉によって、一つの物語として立ち上がります。
- 「もっと話を聞いておけばよかった」
- 「こんな生き方をしていたとは知らなかった」
そうした後悔や気づきを、
葬儀社は数えきれないほど見てきました。
だからこそ、人生を生前に言葉にし、形にする生き活は、
葬儀社の経験と感性が最も活きる分野だと言えます。
4.生き活は「商品」ではなく「プロジェクト」
生き活を単なるサービスメニューとして扱うと、
うまくいかないケースが多くなります。
冊子を作る、動画を撮る――
アウトプットだけを目的にしてしまうと、
本質的な価値は生まれにくいからです。
生き活の本質は、
一人の人生に寄り添いながら進めるプロジェクトにあります。
- 人生を振り返る対話の時間
- 価値観を整理するプロセス
- 家族と共有する機会
そこで生まれる「気づき」こそが、最大の価値です。
完成品よりも、そこに至る過程が重要なのです。
5.生き活がもたらす、経営的な価値
生き活は、葬儀社にとっても大きな可能性を秘めています。
① 顧客との関係性が長期化する
喪失や緊急性を伴わないため、
ミドル世代や現役世代とも自然につながることができます。
② 価格競争からの脱却につながる
人生価値を扱うサービスは単純比較が難しく、
「誰と、どんな姿勢で向き合うか」が選ばれる基準になります。
③ 社員のやりがい・誇りが高まる
人生に深く関わる仕事だという実感は、
現場のモチベーションや定着にも良い影響を与えます。
6.葬儀社は「人生の編集者」になれる
これからの葬儀社は、
葬儀を執り行う存在にとどまらず、
人生を整理し、意味づける
「人生の編集者」という役割を担うことができます。
終活はゴールではありません。
生き活という前向きなプロセスを通じて人生を肯定し、
その延長線上に終活が自然に位置づけられる。
その流れを支えられるのは、
人生の終章を最も真剣に扱ってきた葬儀社だからこそです。
「死」を扱ってきた経験は、
「生」を支える力になります。
終活から、生き活へ。
そこには、葬儀社の未来を切り拓く
新しい“人生価値プロジェクト”の可能性が広がっています。

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