決算を機に考える、葬儀社の事業承継と未来づく

葬儀社の経営者にとって「決算」は1年の成果を数字で振り返る大切な節目。ですが、単に利益や税務対策を確認するだけで終わらせてしまってはいませんか?
実はこのタイミングこそ、次世代への引き継ぎ=事業承継を考える絶好の機会なのです。
「うちはまだ大丈夫」と思っていても、後継者の意志や会社の価値は、準備をしなければすぐに変わってしまいます。本記事では、決算をきっかけに取り組むべき事業承継のポイントを整理します。
目次
1. 決算書は“未来を映す鏡”
決算書は税務署や金融機関に提出するだけの資料ではありません。将来、後継者や第三者が会社を評価する際の重要な判断材料になります。
- 売上の推移は安定しているか
- 利益率は改善されているか
- 借入依存度はどうか
こうした項目は、事業承継やM&Aの場面で必ずチェックされます。毎年の決算を「未来の経営資料」と捉え、改善を積み重ねることで“承継しやすい会社”に育てていくことができます。
2. 後継者と数字を共有できていますか?
子どもや社員が後継者候補である場合、経営の数字を知らされないままでは「会社を継ぎたい」とは思えません。
逆に、決算のタイミングで数字を共有しながら、経営者としての視点を伝えることで、後継者が経営にリアリティを持つことができます。
たとえば、
- 「この利益を残すために、どんな工夫をしたか」
- 「来期は人件費率をもう少し抑えたい」
こうした具体的な会話が、事業承継教育の第一歩となります。
3. 資産と負債の棚卸しは決算直後がベスト
葬儀社は不動産や車両、備品など資産が多い一方で、借入金やリース契約も多いのが実情です。
決算後は、資産と負債を改めて整理し、「承継時の負担にならないか」を点検する良い機会です。
不要な資産を売却したり、返済計画を見直したりすることで、次世代がスムーズにバトンを受け取れる環境を整えましょう。
4. 数字だけではない「会社の見える化」
事業承継で重要なのは財務だけではありません。会社が地域にどう評価されているかも大切なポイントです。
- 地域行事やCSR活動を発信しているか
- お客様の感謝の声を記録しているか
- スタッフの顔が見える情報を出しているか
こうした“非財務情報”は、次世代にとっての無形資産。信頼を引き継ぐ大切な基盤になります。
5. 経営者にもしものことがあったら?
経営者に万一のことがあった場合に備え、最低限の準備をしておくことも必要です。
- 遺言書や株式の承継方法
- 保険金や退職金の準備
- 経営に関わる主要書類の保管場所
決算期は、こうした備えを見直すタイミングとしても最適です。
まとめ
決算は、過去を振り返るだけでなく、未来を描く大切な機会です。
財務の健全性を確認し、後継者と共有し、資産や信頼を整理することで「いつでも承継できる会社」に育てることができます。
9月決算を迎えるこの時期、数字をまとめた勢いで、ぜひ「事業承継と会社の未来」についても考えてみてはいかがでしょうか。