人的資本経営とは?葬儀社が“人”を強みに変える新しい経営戦略

人手不足が深刻化する中、採用しても続かない、育てても辞めてしまう――そんな悩みを抱える葬儀社は少なくありません。価格競争や価値観の多様化が進む中で、「人」によって差が出るサービスだからこそ、人材をどう活かすかはますます重要なテーマになっています。
そこで注目されているのが「人的資本経営」という考え方。人を単なる“労働力”ではなく、“会社の資産”ととらえ、戦略的に育て、活かしていく経営スタイルです。この記事では、葬儀社が今こそ取り組むべき「人的資本経営」について、わかりやすくご紹介します。
目次
人的資本経営って何?
人的資本経営とは、「人材=コスト」ではなく、「人材=資本」として捉える経営のあり方です。
たとえば、社員のスキルや経験、意欲といった“目に見えない力”を、会社の成長につなげていこうという発想です。これまで「人件費は抑えるもの」という風潮もありましたが、今はむしろ「人に投資する会社」こそが、持続的に成長できると言われています。
近年では、大企業を中心に人的資本に関する情報開示が進んでいますが、これは葬儀業界のような地域密着型の中小企業にも、これから確実に広がっていく流れです。
“人”が価値を生む──だから葬儀社にこそ必要
ご遺族への寄り添い、段取り力、宗教儀礼への理解、チームワークや緊急時の対応力──葬儀の現場では、すべて“人”の力が問われます。機械やシステムで代替できない仕事だからこそ、「人」がそのまま会社の価値を決めると言っても過言ではありません。
それにもかかわらず、「人材は採用して終わり」「辞められたら仕方ない」といったあきらめや、「経験者に頼りっぱなし」といった属人化が進んでいる葬儀社もまだまだ少なくありません。
今こそ、人を“コスト”ではなく“資本”ととらえ直し、「育てる・活かす・続けてもらう」仕組みづくりが求められています。
どこから始める?人的資本経営の3つのポイント
人的資本経営を始めるといっても、いきなり難しいことをする必要はありません。まずは以下の3つの視点から取り組んでみましょう。
見える化──“人の力”を見える形にする
人の力は目に見えにくいからこそ、意識的に可視化することが大切です。
たとえば:
- スキルや資格、対応した葬儀の内容などをリスト化
- 本人のやりたいことや適性を共有
- チーム内で「この人はこういう強みがある」と見えるようにする
こうした情報は、適材適所の配置や業務の属人化防止にもつながります。
投資──人材育成を“費用”ではなく“未来への投資”と考える
「研修費がもったいない」という考え方から、「教育は将来の成長につながる投資」というマインドへとシフトしましょう。
たとえば:
- 若手や中堅向けに段階別のOJTや研修を用意
- 他業種の接客やマネジメントを学ぶ機会をつくる
- 社員が講師となる「社内勉強会」や「共有会」の開催
全員で学び合う文化が、葬儀社の強みを育てていきます。
承認──“見てくれている”という安心感がやる気を生む
人は、見られていないと感じるとモチベーションが下がります。逆に「ちゃんと見てくれている」「認めてくれている」と実感できると、自ら成長しようという意欲が高まります。
たとえば:
- 月1回の1on1面談や日々のフィードバック
- 成功事例の共有や感謝を伝える場づくり
- 「ありがとうカード」など小さな承認を文化にする
評価よりも“承認”を重視することで、職場の雰囲気も変わっていきます。
これからは「人が育つ会社」が選ばれる
「人を育て、活かし続ける会社」が、これからの時代に選ばれていくのは間違いありません。
採用が難しい今だからこそ、「すでにいる人」の力に目を向け、信じて育てる。その積み重ねこそが、地域に信頼され、長く続いていく葬儀社になるための、最も確かな経営戦略なのです。
最後に
人的資本経営は、特別な知識が必要な難しい経営論ではありません。「人を信じ、育て、活かす」という当たり前のことを、戦略的に実行していくことです。
まずは、目の前のスタッフの声に耳を傾けることから始めてみませんか?