葬儀現場で進むデジタルサイネージ活用

~“省力化”と“心に届く演出”を両立する新しい選択肢~
はじめに
少子高齢化や人手不足が進む中、葬祭業界にも業務の効率化とサービス品質の両立が求められています。
その解決策のひとつとして、近年注目されているのが「デジタルサイネージ」の導入です。
アナログ中心だった案内や演出にデジタルの力を取り入れることで、スタッフの負担を軽減しながら、ご遺族・参列者への満足度向上につなげることができます。
本コラムでは、実際の葬儀現場で役立つ活用事例と、導入を成功させるためのポイントを紹介します。
デジタルサイネージとは?
「デジタルサイネージ」とは、ディスプレイやタブレットを活用して情報を表示する仕組みのこと。商業施設や医療機関での導入が進む中、葬儀式場でも活用が始まっています。
これまで紙や口頭で伝えていた情報をデジタルで発信することで、視認性や即時性が高まり、業務の省力化にもつながります。
なぜ今、葬儀業界で注目されているのか
1.人手不足と業務の複雑化への対応
家族葬や直葬など、多様化する葬儀形式への対応には柔軟な運営が必要です。デジタルサイネージを使えば、案内の変更もPCやタブレットから即時対応でき、スタッフの業務負担を軽減できます。
2.高齢参列者への配慮
「紙の案内が読みにくい」という声に対して、大きな文字や見やすい色使いができるディスプレイは効果的です。高齢者でも安心して式場内を移動できます。
3.非接触ニーズと感染対策
コロナ禍を機に非接触での案内ニーズが高まりました。デジタル表示で必要な情報を一括で伝えることで、安心して参列していただける環境が整います。
現場での活用例
● 式場入口での案内表示
故人名や式の時間、控室の場所などを表示。急な変更も即時対応でき、紙の張り替え作業が不要になります。
● 故人を偲ぶ映像演出
故人の写真スライドや生前のメッセージ動画などを上映することで、より心に残る演出が可能に。ご遺族の満足度向上にもつながります。
● 受付・待合スペースでの情報発信
通夜振る舞いの案内や焼香の流れなどを事前に表示することで、参列者の不安や混乱を軽減。多言語表示も可能で、外国籍の方にも配慮できます。
● 事前相談スペースでの営業ツール
相談室では、式場の内観映像やプラン紹介動画を活用することで、より具体的なイメージを持ってもらえます。営業力強化にも貢献します。
導入成功のポイント
● 運用体制を整える
表示内容の更新を誰が・いつ・どの機材で行うのかを明確にし、属人化を防ぐことが重要です。
● 高齢者に優しいデザインに
文字の大きさや背景とのコントラスト、簡潔な表現など、高齢者でもストレスなく理解できる設計を意識しましょう。
● 空間との調和を考える
式場の雰囲気を壊さないよう、落ち着いた色合いや緩やかなアニメーションを選ぶなど、演出の「品」を保つ工夫も必要です。
費用と導入効果
「導入コストが高いのでは」と思われがちですが、最近では低価格モニターとクラウド配信サービスを組み合わせた安価なシステムも登場しています。
また、業務効率化による人件費削減や、演出による受注単価アップを見込めば、投資対効果の高い設備と言えるでしょう。
おわりに
デジタルサイネージは、便利なツールであると同時に、ご遺族や参列者に「丁寧なおもてなし」を伝える手段でもあります。
“省力化”と“感動”の両立を叶えるこの取り組みは、今後の葬儀サービスにおける信頼構築のカギとなるはずです。
まずは1台から。無理なく始められる範囲で、デジタル化への一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。